北天満サイエンスカフェ
北天満サイエンスカフェは、天五中崎通り商店街(おいでやす通り)で行われている、まちづくりと地域活性のための
プロジェクトです。お茶を飲む気軽さで、科学者と一般の皆さんが議論・交流する場を提供しています。


お知らせ

2017.01.31.
3月25日 第106回北天満サイエンスカフェは、天五中崎通りで開催です。
親子で面白実験を体験しよう。

次回のサイエンスカフェ

第106回 北天満サイエンスカフェ

こども面白サイエンスカフェ 22

2017年 3月 25日(土)14時~16時

演示・指導:理科の先生の皆さん

会場:天五中崎通商店街



前回のサイエンスカフェ

第105回 気候変動枠組み条約 パリ協定がめざすもの
昨年11月「気候変動枠組み条約パリ協定」が発効しました。パリ協定は、地球温暖化によって進行しつつある様々な影響を最小限に食い止めるために、すべての国が一致団結して必要な対策をとることに合意し、その具体的手立ても決めた歴史的な協定と評価されています。ところが、直後に誕生したトランプ政権が、米国の「気候行動計画」を破棄すると表明したことから、予想されていたこととは言え、パリ協定は乗り越えて行かねばならない課題が山積していることも明らかとなった船出となりました。

話題提供者の早川光俊さんの本職は弁護士です。西淀川区の大気汚染公害や、水俣病などの公害訴訟に関わってきました。その運動の中で、「地球環境と大気汚染を考える全国市民会議 」(CASA)の結成に参加。現在はCASAの専務理事を務めています。国連の気候変動枠組み条約締結国会議(COP)にもNGOの代表の一人として参加し続け、この問題では、日本における第1人者です。



早川さんが強調するのは、国連の議決は多数決ではなく「コンセンサス」、つまり全会一致が原則で、例え1国でも反対すれば成立しないということ。パリ協定は地球温暖化の進行を最小限に止めるために、すべての条約締約国に厳しい目標を課す。それでも、熟議を重ね、最終的にすべての締約国が合意に達したというのは、とても画期的、凄いことなのです。これを支えたのが、地球温暖化についての科学的根拠と各国政府に働きかける粘り強い市民の力です。

2013年から2014年に、気候変動に関する政府間パネル第5次報告書(IPCC AR5)は、「地球温暖化はもはや疑う余地がない。また、このような気候変動が、主に人間が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを過剰に放出し続けていることが原因である」ことを科学的に、説得力をもって示しました。実際に、世界平均地上気温はすでに19世紀後半以来0.85 ℃も上昇し、ここ数年は毎年最高値を更新しています。また、大気中の二酸化炭素濃度は2015年、ついに400 ppmを突破してしまいました。世界平均地上気温は大気中に蓄積された二酸化炭素の総量に比例することが明らかになっているので、このままでは、あとたったの30年足らずで、19世紀後半から+2 ℃を越えてしまいます。すでに大規模な干ばつや豪雨の被害が地球の各地で発生していますが、+2 ℃を越えると、これらがさらに頻発し、生活環境だけでなく、世界の食糧生産にも深刻な影響を与えることになります。それは世界を不安定化し、紛争も増してゆくことが懸念されます。

パリ協定は、世界平均地上気温上昇を+2 ℃を十分に下回るレベルに維持することを目的とします。そのために、各国は直ちに行動を起こさねばなりません。そして、21世紀後半には、温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量をバランスさせることも決めました。これは温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、つまり完全な脱炭素社会を実現するというとても高い目標なのです。それでも、達成されねばならいないことが合意されました。



スウェーデンは2045年、ヨーロッパの中では後進国であるポルトガルも2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにすると宣言。インドや中国も深刻な大気汚染問題もあって、急速に脱炭素化を進めています。一方、世界の二酸化炭素主要排出国の1つである日本はどうなのでしょうか。日本は事もあろうに、東日本大震災を口実に2020年目標を1990年比+5.8%とするとして、世界を唖然とさせ、みごと化石賞を受賞しました。このままでは、2020年から2030年に20%、2030年から2050年までに50%以上の削減が必要になり、日本の脱炭素化はますます困難な目標になってゆきます。政府も地方行政も、リニア新幹線やら、カジノ・万博誘致に浮かれている場合ではないはずなのです。

早川さんは、NGO代表としてCOPに参加しつづけてきた経験から、「国益」やさまざまな「利害」から自由な市民や消費者こそが、この状況を変えて行くことができると強調します。アメリカにトランプ政権が出てきても、早川さんは楽観的です。ヨーロッパやアメリカには、政府の政策を後退させない市民の運動が広がり、根付いてきているそうです。日本の環境NGOも早く、日本の政策決定に影響を与えて行けるように育ってゆくことが求められます。そのためには若い世代を巻き込んでことが必要ではないかと参加者から。早川さんは、シニア世代の役割も大切としつつ、若い人たちには、先ず知ってもらうことだと答えました。北天満サイエンスカフェも、このために微力ながら貢献を続けたいと思います。

…(前回以前の記録)