北天満サイエンスカフェ
北天満サイエンスカフェは、天五中崎通り商店街(おいでやす通り)で行われている、まちづくりと地域活性のための
プロジェクトです。お茶を飲む気軽さで、科学者と一般の皆さんが議論・交流する場を提供しています。


お知らせ

2016.9.18.
北天満サイエンスカフェは、ついに100回!! 100回を祝って参加者で乾杯!

次回のサイエンスカフェ

第101回 北天満サイエンスカフェ

7周年+101回記念「リニア新幹線は何を運んでくるのか」

2016年 10月 23日(日)14時~16時

話題提供:西川 榮一さん(神戸大学名誉教授)

会場:天五中崎通商店街路上



前回のサイエンスカフェ

第100回 こどもの発育・発達と運動  発育期の持久的トレーニングについて
9月18日、秋雨前線による大雨も心配されていましたが、幸い午前中に雨は上がり、商店街もいつもの日曜日の人通りに。7年前に始まった商店街のサイエンスカフェは、月に1回以上の開催を重ね、ついに100回に到達!!ワインを乾杯してから和やかに始まりました。

記念すべき第100回の今日は、毎年9月のサイエンスカフェ恒例、大阪マラソン応援企画として、地元北天満の住人でもある渡邊完児さん(武庫川女子大)が話題提供。参加者には、大阪マラソンのロゴマーク入りのおみやげも配られました。

渡邊さんは、はじめにリオ・オリンピックでたくさんの日本人アスリートが活躍、とりわけ10代選手が躍動したことを紹介。この背景には、日本でも、こどもの発育・発達期に応じた科学的で適切な指導が成されるようになったことがあると。ここで、発達(development)とは、体の様々な機能がおとなに向かって発達すること、発育(growing)とは体が大きくなることで、区別されます。



渡邊さんは、発達科学ではよく知られる「スキャモンの発達・発育曲線」をスライドに。0歳から20歳にかけて、体の臓器は、神経系型、リンパ系型、一般型、生殖器型の4パターンで発達します。このうち、神経系はもっとも早く発達し、およそ10歳で20歳の90%に。そのため、小学校期には、遊びの中で、投げたり、走ったり、さまざまな運動を体験し、たくさんの動作のフォームを身に付けることが大切に。最近女子でも野球やサッカー選手が活躍するようになってきたのは、こどもの遊びに昔のような男女差がなくなってきていることも影響か。

一方、呼吸器や循環器は、10歳から20歳にかけての第2発達急進期に発達します。この時期になって、体はようやく筋力、持久力、瞬発力を獲得します。かつてリトルリーグで、野球少年が野球肘になり、大人になっても障害が残るということがよくありましたが、これは筋肉や骨の発達が十分でないときに、過度の運動をさせた指導の問題であると渡邊さんは指摘。

こどもの呼吸器・循環器の発達を測定するのに、渡邊さんはラジオ体操を利用。ラジオ体操の6分間の運動の前後で、脈拍と呼吸量の変化を測定。呼吸器・循環器の発達にともなって、脈拍の変化量は小さく。呼吸器・循環器の発達したマラソン選手では、静穏時の脈拍は一般人よりずっと低いそうです。



このようにして、こどもの発達に適した運動指導は、小学校期にはいろいろの遊びやスポーツを経験し、さまざまな動作を身に付ける。中学校期には、粘り強さを鍛え、高校生になったら筋力を鍛えるというのが良いという結論に。

とはいっても、オリンピック選手を見ていると、トップアスリートにはやっぱり遺伝子も大きな因子であるような・・・。実際に、マラソン選手と短距離走選手の筋肉を調べてみると、マラソン選手では、持久力に寄与する遅筋が80%であるのに対し、短距離走選手では、60%が速筋。なんと、速筋の割合は3倍にも。トップアスリートを育てるには、若いときに様々な種目を体験させて、体に適合した種目を選ばせることが大事なようです。(YN)


第99回 黄昏サイエンスカフェ「地球深部物質のなぞ」
今年の夏は本当に暑いですね!第99回のサイエンスカフェが行われた8月7日も例外ではなく、夕方になってもジリジリとした暑さが残っていました。そんな黄昏時、今回は商店街から少し外れたところにある北天満会館でのカフェ開催です。商店街の路上での白熱した議論が私たちのカフェの特徴でもあるのですが、さすがに今回はクーラーの効いた部屋でのサイエンスカフェになりました。

さて、今回のテーマは「地球内部物質の謎」。話題提供者の近藤忠さん(大阪大学大学院理学研究科)は、ラボでの実験を通じて惑星の内部の物質を研究されています。カフェ開始前、参加者の皆さんに今回のカフェへの期待を伺ってみると、「自分がいつも立っている場所なのに、その下のことはあまり知らない」、「宇宙のことを聞く機会はあるけど、地球内部について知ることはあまりない」とのこと。確かに、日常で意識する地球内部で起きることと言えば地震くらいでしょうか。やはり地球の内側で起こっていることはまさに謎だらけですし、その分長らく人類の関心を惹きつけてきた分野でもあります。近藤さんもSF映画「地底探検」の一コマをはじめに紹介されました。



皆さんは「地球内部はどうなっているか」と聞かれるとどのようなイメージを持たれるでしょうか。表面にはいくらかの土壌があって、その下にはマントルがあって、地球内部はぐつぐつ煮え立ったマグマがある…そんなイメージでしょうか。実はこの質問は超難問(!?)で、近藤さんによると、大阪大学理学部の新入生に問うてみても、正答率は20%以下とのことでした。

最新の研究によると、花崗岩や玄武岩でできた地殻が表面を覆っており、その下には、地球で最も含有量が多いとされる鉱物、かんらん石や輝石、ガーネットからなる上部マントル、それらの結晶構造が変化した遷移層と続き、さらに高温高圧でペロブスカイト型という結晶型になった鉱物が下部マントルを構成しています。ちなみに、この下部マントルの鉱物は2014年に新しい名前が決定され、ノーベル物理学賞受賞者の名前を取ってBridgmaniteと呼ばれるようになりました。ここまではすべて固体の岩石で、地球の体積の84%を占めています。マントルは液体なく、固体なのです!ついどろどろのマグマを想像してしまうのですが、実はそれは大間違いということにびっくり。

さらにこの内側にある外核が地球内部で唯一の液体層で、液体の鉄。この液体鉄があることで地磁気が生み出されています。そして、地球の最も中心には固体の鉄からなる内核があります。「最も高温になる中心に固体がある」というのは直感とズレがあるように思いますが、注意しなければならないのは圧力です。大きな圧力がかかればかかるほど融点は上がるので、深さ6400 km、360万気圧にも達する地球の中心では、超高温にも関わらず固体の鉄が存在しています。近藤さんは参加者の質問に答えながら、丁寧に解説してくれました。



では、このような半径6400kmにもなる地球内部についてはどのように知られてきたのでしょうか。実際に地下に穴を掘って調べるという手法も取られていますが、せいぜい10kmが限度です。実は地球内部を「みる」ことに役立つのが波です。しかも地震の波。天災として私たちの生活にマイナスの影響を与える地震ですが、科学研究の分野では重要な観測手段になっています。地球の陸の各地に設置された地震計のデータから、地震波は屈折率の変化で曲がっていく、深いほど速度が増加する、物質の境界で屈折や反射を起こす、といった波の性質を考慮して解析した結果、今から50年ほど前になって、ようやく人類は地球内部の様子を想像できるようになったそうです。

さて、ここで、近藤さんが持参して下さった実験器具、DAC:ダイアモンドアンビルセルのご紹介です。今までお伝えしてきたように、地球内部は高温・高圧という地上とはかけ離れた特殊な環境にあります。その内部のことを知るためには、そのような条件を実験室で再現しなければなりません。そこで活躍するのがダイアモンドと強いX線です。ダイヤとダイヤの間に鉱物試料を挟み、高温・高圧を実験室内で実現することが可能になります。このような条件下では、物質の原子間の距離が短くなり、配位数が上がる高圧相転移という変化が見られます。この高温高圧なった1mmにも満たない鉱物資料にX線を照射して、結晶構造を決めます。温度と圧力という二つのパラメータを操作して鉱物の高圧相転移を詳しく調べていくことで、地球内部のマントルが層構造になっていることの解明につながりました。

このように地球の内部を調べると、将来の大陸移動の予想も可能になります。大陸は大昔から離散と集合を繰り返しており、今は6つに分かれている大陸も、いずれはまた一つにまとまる日が来るとのことでした。また、何かのきっかけで岩石が圧力から解放されるとその一部が液体になり、地表へ向かって移動してきますが、このような動的で不均質な地球観の理解も深まっているとのことでした。

最先端の科学を持ってしても、まだまだ私たちの星の内部は謎だらけです。一方で、皆の関心は月や火星という地球外部に向けられることが多いのも事実です。地球内部を利用するより、人類が月や火星に住む方が先に訪れるだろうと近藤さんはおっしゃっていました。いずれにしても、スケールが大きく、夢とロマンのある世界であることには変わりはありません。これからの新発見を楽しみにさせてくれるような、そんなサイエンスカフェになりました。また来年の黄昏サイエンスカフェでも宇宙・地球関係の話題を取り上げる予定ですので、みなさんからのリクエストもお待ちしています。(ST)



…(前回以前の記録)