2023.7.18
北天満サイエンスカフェは、商店街アーケード路上で開催しています!
第171回北天満サイエンスカフェ
地域で災害に備える
日時:10月29日(日)14時~16時
ゲスト:南浦正洋さん(大阪市北消防署)
会場:天五中崎通商店街(黒崎町交番付近)

こども面白サイエンスカフェ・オンライン
面白実験をいろいろ紹介します。第170回北天満サイエンスカフェ「大阪湾の自然再生を待つ海辺の生き物たち」
本日の話題提供者は、大阪市自然史博物館の元館長、西宮市貝類館の顧問の山西良平さんです。長年、大阪湾に暮らす多様な生き物と大阪湾の自然再生を調査・研究してこられました。
大阪湾は紀淡海峡と明石海峡の二か所で開口し、三方を陸に囲まれた内海です。湾奥からの淀川や大和川などの流入河川水と、南からの外海系水がせめぎあって環境勾配が生じています。そのためイソギンチャクやアオウミウシ、マダコなどの紀淡海峡付近の湾口に多く分布する湾口型、ムラサキガイやマガキなど湾奥において多い湾奥型、河口付近の汽水域に限って出現するドロフジツボやスジアオノリなどの河口型という三種の生物群が共存しており、非常に多様な生物の住処となっています。
かつて、大阪湾では生活排水などの垂れ流しによる富栄養化で赤潮が発生しました。また、埋め立て地の増加は湾岸域の海水の滞留ももたらしています。さらに、海底の浚渫でできた窪地は貧酸素となり、それが原因で青潮といった環境問題も起こすとのことでした。それでも、1990年代ごろから水質改善のために総量規制や法改正など様々な対策が行われ現在では赤潮の原因となるリンや窒素なども減少しています。また、大阪湾に干潟などを人工的に作る自然再生なども行われています。
その結果、現在ではむしろ大阪湾の貧栄養化が進んでしまうという皮肉なことになってしまいました。このことに関して、いかなごやカキなどの具体的な事例をもとに活発な意見交換が行われました。人の手による環境の保全は一筋縄ではいかないようです。
最後に山西さんは、「大阪湾生き物一斉調査」などの成果に基づいて作成した「大阪湾で復活して欲しい・増えて欲しい生き物 ウエルカムリスト」を紹介しました。今後このリストを手に、市民が親子で浜辺の宝物探しを楽しめれば、世界に誇れる取り組みに発展するのではないでしょうか。
残暑の中、サイエンスカフェへのご参加をありがとうございました。
第168回北天満サイエンスカフェ「夢洲の湿地 大阪の貴重な自然に」
かつて日本列島の代表的湾岸(有明海、大阪湾、伊勢湾、東京湾)には発達した自然の干潟が広がっていました。干潟は遠浅の海で、満潮になると海水に覆われますが、干潮時には湿地となる環境で、たくさんの生き物を育んできました。そこに、何万羽という渡り鳥たちが飛来して、羽を休めたり営巣したりします。本日の話題提供者、夏原さんは、江戸時代から大阪湾の干潟が干拓されたり、埋め立てられたりしてどんどんなくなっていった様子を示しました。今や大阪府の自然海岸はわずか1%程度になってしまいました。
ところが、半世紀に亘る建設残土や廃棄物の埋め立て処分でできた人工島夢洲には、私たちが気づかない間に、海水や雨水が覆う湿地ができ、絶滅したと思われていた植物や虫たちの豊かな住処となっていました。自然はその地にあるべき姿を見事に再生させていたのです。夢洲湿地にはたくさんの渡り鳥たちが飛来するようになり、日本で最も大きな野鳥飛来地の1つとなっていたのでした。
しかし、これもまた私たちが知らない間に、2025年の大阪・関西万博会場を建設するため、あっという間に湿地は埋め立てられ、もはやほとんど消失してしまいました。残すべき自然環境がある場合には、先ずその場所の利用を回避する、それができない場合には、自然破壊を軽減する、それもできない場合には、代償措置を講ずることが基本なのに、2025年万博の場合は、初めから会場は夢洲と決定されていました。夏原さん曰く、隣の人工島舞洲は、空き地だらけで、万博を開催するに十分の土地があったのにです。ちなみに、2025年万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ということになっています。
万博の主催者は、万博が終わった後については知らないとしています。参加者からは、近い将来南海トラフ地震が必ずやってくるのに、夢洲に巨大集客リゾートを建設なんてナンセンスの声も。夏原さんは、夢洲に湿地を復活させ、本当に「いのちが輝く土地」とすることを提案しました。万博開催まで2年を切った今、大阪の市民は夢洲湿地を世界に誇れる自然として復活させる夢のある取り組みを始めようと、サイエンスカフェは大いに盛り上がりました。
今回もたくさんのご参加をありがとうございました。
第167回北天満サイエンスカフェ「南極観測から分かること」
今年は5月末に早くも梅雨入りとなりましたが、幸い北天満は好天に見舞われ、穏やかなサイエンスカフェ日和となりました。今日の話題提供は上村剛史さん、第46次南極地域観測隊に水の循環の研究者として参加されました。
南極昭和基地は比較的温暖で、夏は-2℃前後、冬は−20℃くらい。南極は極寒の地のイメージですが、確かに内陸部はとても寒いけれど、それは内陸部の標高が高いことも原因しているとのこと。大陸を覆う分厚い氷は、3000メートルを超えています。氷は降り積もった雪が融けることなく積みあがってできたもので、氷には太古の昔の空気が閉じ込められています。日本の調査隊は、氷床を深さ3800メートルもボーリングして日本に持ち帰っています。それにより過去37万年の地球大気組成の変化を追うことができます。
上村さんは、南極で観測される赤、緑、そして青白いオーロラの写真を見せてくれました。オーロラは地球が両極を結ぶ磁石なので、その磁力線に沿って宇宙から流れ込む荷電粒子が空気分子と衝突して現れ、カーテンのように見えます。縦縞模様に濃淡が交互に現れる不思議なオーロラの写真もありました。
日本ではペンギンは南極の動物と思われているけれども、ペンギンは南半球に広く分布していて、熱帯のガラパゴス諸島にも生息。天王寺動物園で飼育されているペンギンも実は土に穴を掘って巣をつくるペンギンだそうです。動物園では、来園者の先入観に合うよう、氷のように白く塗られたコンクリートの上で生活させられているけれど、本人(鳥)たちには違和感があるのでは?とのことでした。
会場では参加者が、上村さんが南極から持ち帰った、氷河に削られた痕の残る石に触れることができました。また、前回ボルネオの熱帯林の話の時と同様に、今回もたまたま通りがかりの南極旅行したいという方も熱心に参加してくれました。南極図鑑を持参してお母さんと一緒に参加してくれた小学生も。きっと将来南極観測隊員になって、地球環境の研究に貢献してくれることでしょう。商店街の一角がたいへん盛り上がるイベントとなりました。
第166回北天満サイエンスカフェ「生物進化の宝石箱 ボルネオ島の森」
5月7日、大型連休最終日はあいにく終日雨となりました。この天候もあって、商店街の人通りはいつもの休日よりは少なく、早めに店じまいする店舗も。それにもめげず、商店街のサイエンスカフェはいつものように、アーケードを会場に元気に開催されました。今回のゲストは、石崎雄一郎さん。ボルネオ島の熱帯林の保全活動を続けてきた「ウータン・森と生活を考える会」の事務局長です。
石崎さんは、太陽系の惑星として誕生した地球の歴史を辿り、地球は生命によってつくられた惑星であることを強調しました。それについで、生物進化1億年の歴史を辿ることができるというボルネオ島の森の生態を紹介。ちなみにウータンとは現地の言葉で森という意味です。その森の特徴は生物種の圧倒的な豊富さ。石崎さんは、生き物クイズで、ボルネオ島の固有種テングザルの鼻の穴の場所や、サイチョウの名の由来と暮らし、様々な昆虫の驚くような擬態、森を滑空する種子などを紹介してくれました。ところが近年、大規模な森林伐採・皆伐で、高木の洞に巣をつくるサイチョウは住処を奪われ、絶滅の危機にあるとのこと。
さらに、森を一歩出るとそこには広大なアブラヤシ畑がひろがっています。そこは単一の植物が規則的に植わっている世界で、森とは対照的に、極端に貧困な生態系となっています。アブラヤシの実は、農場に隣接された工場で搾油されてパーム油として出荷、輸出されます。日本ではその廉価なパーム油を原料に様々な加工食品が造られ、私たちの日常生活に浸透しています。この安いパーム油を採算が取れるように生産するためには、分散した小規模な畑ではだめで、広大な畑を切り開かねば成り立たないということも紹介されました。
第2次世界大戦後、フィリピンやインドネシアの熱帯林は伐採され続け、廉価な南洋材として日本に輸入されて、建設現場などで消費されてきました。今日フィリピンやインドネシアの森林被覆率は日本をはるかに下回るまでになっています。石崎さんは手軽で安く手に入る商品で支えられてきた私たちの生活は、それらに本来払われるべき対価の支払いを生産地の人々や自然、未来の世代に押し付けていると強調しました。
石崎さんは、買い物をするときに、それらの商品がどこでどのように作られたのかに思いを馳せることから始めて、私たち自身の生活の在り方を見直す必要があるのではないかと問いかけました。世界中どこに行っても、同じ材料で作られたハンバーガーを同じ値段で食べることができることが、はたして本当に豊かな生活なのかを考えるべき時代になったのでは?
今回のサイエンスカフェには、ボルネオに行ってみたいという女性や、ダイビングのためにボルネオに行ったことがあるという男性など、通りがかり方々も参加。商店街ならではのサイエンスカフェになりました。次回もお楽しみに。
第165回北天満サイエンスカフェ「こども面白サイエンスカフェ30」
ついに、こども面白サイエンスカフェが商店街に帰ってきました。
商店街にも徐々に人通りが回復し、穏やかな春の日差しの下、第30回目となるこども面白サイエンスカフェが開催されました。
7人の理科の先生たちによる、虹色マジック、力学マジック、磁石マジック、音波マジック、化学マジックなどが披露されました。商店街には、参加者の歓声が響き渡り、子どもたちは、マジックでつかった道具を一生懸命作りました。大人たちは、マジックのからくりの説明に納得、連休中の子どもたちとの対話の材料を得て、今度はいつですか?と帰って行きました。
こども面白サイエンスカフェは、新しい科学マジックを用意して、また開催します。お楽しみに。
第164回北天満サイエンスカフェ「ゲノム編集 産業利用が始まった」
すでに桜は開花しましたが、あいにくの肌寒い雨。サイエンスカフェはオンラインで開催しました。テーマはゲノム編集で、小早川義尚さんに話題提供していただきました。
生物の遺伝子の分子構造と遺伝情報の仕組みが分かったのが20世紀の半ばでした。それから生物の進化や発生の仕組みを明らかにするために、遺伝情報をコードしたDNAを操作する様々な手法が開発されてきました。特に2020年ノーベル化学賞のCRISPR/Cas9は、非常に使いやすい方法であったために、生物学の研究手段として大いに普及しました。
同時に、その技術を植物や動物の特定の遺伝子をノックアウトして、突然変異体を人為的につくり、人間の期待する性質をもった生き物として商品化することも始まっています。GABAを増強したトマト、筋肉を肥大化させたタイ、食欲の抑制を外し急速に大きく成長させたフグなどが既に売られています。
日本では、ゲノム編集生物を商品化することは、他の生物の遺伝子導入がない限り、自然に起こる突然変異と同じと見なして、届け出るだけで良いことになっています。
しかし、ゲノム編集が本当に狙った遺伝子だけを壊しているのかを確認することは容易でなく、その保証もない。「編集」という表現が雑誌や本の編集者の意のままの編集を連想させるので良くないと小早川さん。
ゲノム編集の応用で注意せねばならないのは、ヒトの生殖への応用、動植物の場合に野生化したときの生態系への影響、食品等の場合に毒性の発現です。日本では、今のところゲノム編集動植物は大学発ベンチャーとして産業利用されています。大学での研究や教育のあり方も話題になりました。軍事研究に結びつく危険も指摘されました。
インシュリンやヒト成長ホルモンが大腸菌の遺伝子組み換えによって生産されています。ゲノム編集に限らず、今日既に遺伝子操作は人間に多くの恩恵をもたらしていいることは否めません。小早川さんは、情報の公開と市民と研究者の日常的な対話が必要であると強調しました。
…(前回以前の記録)