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第33回「ランニングに必要なスポーツ栄養の知識」
10月30日は何の日かご存知ですか?実は大阪マラソンの日です。
ということで今回は武庫川女子大学健康・スポーツ科学部の渡邊完児先生を招いて「ランニングに必要なスポーツ栄養の知識」について話していただきました。そして今回はいつものサイエンスカフェと違って大阪マラソンのキャラバン隊のお姉さんたちがチラシを配りに来てくれました。
いつもと違った感じの始まりでしたが、今回のサイエンスカフェのテーマ「ランニングに必要なスポーツ栄養の知識」は、10月30日の大阪マラソンをはじめとして、今後の市民マラソンに参加する人の役に立つと思います。
最初に先生は「今の日本の健康の現状について話していき、次にランニングについて栄養と絡めた話をしていく」と述べられました。確かに、ランニングの話をただするだけよりも、身近な話題から入っていくと僕も話をつかみやすいなと感じました。
そして、お話が始まりました。
先生はまず、「今、日本では生活習慣病が問題になっている」とおっしゃいました。
その生活習慣病とはなんでしょうか?昔は成人病と言われてたはずです。
「今では大人だけの病気ではない」とおっしゃる先生。
確かに僕もよく二十歳未満の子供に生活習慣病が増えていると聞きます。
生活習慣病には、糖尿病や高血圧、脳こうそくやメタボリックシンドロームなどがあります。
このような病気、また、その原因となる不摂生な生活は最終的にはがんなどの致命的な病気につながりかねません。
恐ろしい生活習慣病。私たちはその対策を知らねばなりません。
先生は「食事のバランスをかんがえたり、睡眠・休養を取ったり、たばこやお酒を控えたりなど」いろいろな対策があるとおっしゃっていました。
しかし、こうしたことは日本人の約75%の人が意識しているそうです。
先生の研究により意識されていないのが運動だということが分かったそうです。
また、生活習慣病にならないために大事なのはエネルギー出納バランスを保つこととおっしゃられていました。
エネルギー出納バランスを保つとは摂取したエネルギーと運動の時に消費するエネルギーのバランスを保つということです。天秤のようなイメージですね。
この天秤のようなイメージを持つにはやはり栄養と運動の関係を知らなければなりません。
このあたりで話が次に進んでいきます。
後半はランニングと栄養の関係のお話が中心でした。
まず、両者の関係を知るうえで基礎というのは重要になります。
ここで先生は運動と栄養の関係をわかりやすいように基礎と応用にわけてくださいました。
基礎として先生が示したのは「自分が1日でどれくらいのカロリーを取ることが適切なのか」や「人間の体に必要な五大栄養素について」。
ちなみに五大栄養素ってわかりますか?タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルです。
これらの栄養素は、運動時のエネルギーの供給には糖質、脂質、タンパク質が重要になり、運動時のエネルギー産生にはビタミン類、トレーニングによる筋の肥大にはタンパク質、からだの機能調整(成長促進、皮膚の保護、骨へのカルシウム吸収促進、疲労回復など)にはビタミン、ミネラルが必要となります。
そして、いま挙げた五大栄養素のうち、糖質と脂質についてが今日の話に最も関係するということで、この2つに焦点がしぼられました。
まず糖質は運動強度の高い運動、つまり激しい運動(陸上トラックやサッカー、バスケットボールなど。もちろんマラソンもこの一部に含まれます)に必要とされます。いわゆる糖分の補給によるエネルギー回復です。勉強に疲れたときにチョコレートが欲しくなったりします。また、運動の場面でもオリンピックの42,195㎞を見ていると途中でスポーツドリンクを飲んだりしています。これが糖質によるエネルギーの補給です。
また、このスポーツドリンクには2種類あります。アイソトニック飲料(体液と同じ浸透圧の飲料)とハイポトニック飲料(体液より浸透圧が低い)です。ハイポトニック飲料の方が味は薄いですが、吸収速度は速いです。これにより糖質の吸収も早くなります。
このハイポトニック飲料は、アイソトニック飲料を水で薄めることで自分でも作ることができます。なのでスポーツ飲料は粉末で自分にあったものに調整することが最も良いとのことです。
ここで「確かに粉末の方が便利ですね。」と先生と盛り上がる司会者。
確かに自分も粉末の方がいいなと感じました。
次に、脂質は運動強度の低い運動(ウォーキングなど)の時に消費されます。つまり脂肪を燃焼させたい人は運動強度を下げる方がより効率的だということです。
さてここで話題は今回のタイトルにも入っているランニングの話に移りました。
ジョギング、ランニングをするときの留意点をしらないといけないということです。
まず、非肥満の人は走るスピードが自分に適切かを考えていきましょう。スピードが速すぎるとからだの血中酸素濃度が上昇して長時間走れなくなります!一番良いのは、ややきついと思う程度のスピードで走ることだそうです。
肥満の人はウォーキングから始めましょう。無理は禁物です。血中に乳酸がたまらないように運動し、しっかりとウェイトコントロールをしてからジョギング、そしてランニングへと移行していくのが良いということです。
その他にも、走行距離が分からない時は走行時間を決めて走ること、ウォーミングアップやジョギング、ランニング後のストレッチ、アイシングも重要ということを挙げておられました。
この点に留意して楽しく走ることも大切です。
そしてここからは特に、大阪マラソンに参加するなど本格的にマラソンをする予定の方にとって重要なことを紹介していただきました。
それはトレーニングとグリコーゲンローディングの2つでした。
1つ目、トレーニングしないとやはり長距離は走れません。そのトレーニングの時に意識してほしいのは
1、全面性の原則
2、個別性の原則
3、過負荷の原則
4、漸進性の原則
5、反復性・連続性の原則
6、意識性の原則
です。
最後とはいえ、意外と6番目の「意識性の原則」が大切なのではないかということです。
確かに、意識が低いとどんなに頑張っても無駄になりますよね。
そして2つ目は、今回重点を置いている栄養という観点からの、グリコーゲンローディング。
体の性質として、激しいトレーニングなどでグリコーゲンが枯渇状態になった肝臓や筋肉では、糖質を摂取すると元の状態以上にグリコーゲンを蓄積する超回復という現象がおこります。
この性質を使うのがグリコーゲンローディングです。たとえば、大きなマラソンの大会の1週間前からトレーニングを軽くしていき、かつ、その1週間で前半4日間は混合食、後半3日間は高糖質食をとります。すると糖が元の状態以上に蓄積されるので、以前より体力が持つというわけです。 マラソンなどの運動強度の高いスポーツには糖が必要だということを思い出すと、確かに理にかなった方法だと僕自身感じました。
ここで会場は「ところでその高糖質食って何?」という空気に。先生、それは何ですか?
「実は、高糖質食とは大阪人の食べ方なんです!」
たとえば、親子丼とうどん/そば、餅いりうどん/そば、お好み焼きとご飯など。こうした大阪ならではの定食が、マラソンの味方だったんですね!
運動と栄養にはこんな深い関係があります。これを見て少しでも気になって実践してみたいと思ってくださる方がいれば、書いている本人も嬉しいし、先生も喜ばれると思います。(Y.M.)
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