• 第50回「今晩から月の見え方が変わる話」

    Date: 2013.01.08 | Category: 未分類 | Tags:

    夏もいよいよ本番となった8月頭の夕方。その日は近くで花火ということもあり、浴衣姿の方も散見される中、記念すべき第50回北天満サイエンスカフェが開催されました。

     

    今回は「今晩から月の見え方が変わる話」と題して大阪大学理学研究科所属の佐伯和人さんに話題を提供していただきました。

     

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    皆さんも「出た 出た 月が」で始まる文部省唱歌『月』はご存知かと思いますが、その歌詞にこのようなものがあります。

    「お盆のような月が」

    この歌詞は1番の歌詞の最後の部分ですが、この歌をはじめて佐伯さんが聞いたとき変だと思ったそうです。当時佐伯さんは小学生でしたが、その頃から天体好きだったため、月が円形(お盆のような形)ではなく、球体(ボール状の形)であることを知っていたからです。

    しかし、大きくなって月のことを研究するようになって、この歌詞に納得がいくようになったそうです。月には隕石が大量に降り注ぐため月の表面は粉々になり、結果月の表面は1mm以下の砂に覆われています。その結果として月が平面的に(つまりお盆のように)見えるようになるとのことです。

     

    次に月のでき方についての話がありました。代表的な説としては4つあり、

    同時説…たまたま似たような場所で月と地球が同時にできたという説です。しかしこの説で考えられる重さより実際の月は軽いそうです。

    双子説…地球の自転によって地球の一部が宇宙に飛んでいってそれが月になったという説です。しかしそのようなことが起こるためには現在考えられている地球の自転速度より速い速度で回っている必要があります。

    巨大衝突説…巨大な(火星ほどの大きさの)隕石が地球に降ってきて、その衝突で地球の一部が宇宙に飛び出し、それが月になったという説です。近年ではこの説が最も有力視されていますが、この説にも問題点があり、そのような隕石が地球に衝突しても地球の破片より隕石の破片の方が先にまとまってしまいます。そしてもう1つ問題があり、月と地球の公転平面は一致していますが、それがこの説では説明しにくいそうです。

    捕獲説…そもそも月は地球から遠く離れた場所でうまれたが、その後に地球の重力に引かれて今のような地球の衛星になったという説です。この説は地球の質量が小さいため現実的ではないと見られています。

     

    月の岩石についても話がありました。斜長岩はカルシウム・アルミニウムなどからできていて白くて軽いのが特徴です。クレーターができて1億年から10数億年ほどの地面はこの斜長岩でできています。他にもマグネシウム・鉄などからできる玄武岩・カンラン岩などがあります。1970年の万博などで話題になった月の石の話もありました。月に行って月の一部を持って帰るのは難しいですが、月の岩石なら10万円ほどで買う方法があります。それは「月隕石」です。月の破片が隕石として地球に降り注ぐのでそれなら買えないこともないというわけです。値段はおよそ500mgで10万円ほどです。

     

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    (スクリーンの女性は佐伯さんの娘さんです。)

     

    「かぐや」の画像を用いた月の地名(?) の紹介もありました。

    クレーターの内部の中央丘は高さが2500mもあるものもあります。月の内部の物質が隕石の衝突で外にでてきたものです。隕石の衝突からものの数分でできたそうです。

    アルプス谷は全長143km、幅は11~14km、深さがおよそ700mの大きな谷です。底は溶岩で覆われていて平坦で蛇行した溝があります。谷の端と端では330mの高度差があります。谷の入り口の山と谷底の標高差は3000mを超えています。

    アルプスの谷は月の表側の地形ですが、裏側にはモスクワの海と呼ばれる地形があります。直径300kmで、約25億年前にできたそうです。この海の表面も溶岩で覆われていて平坦です。この海には大小様々な大きさのクレーターがありますが、最大のものは直径31kmのものです。

    「かぐや」が精密な観測ができるのは「かぐや」が目に見えない光も捉えられるからです。人の目に見えるのは400~700nmの波長の光(3バンド)ですが、「かぐや」が測定できるのは415nm~2600nmの波長の光で、バンドだと200バンド以上です。他の人口衛星の場合ですと、米国のクレメンタインという衛星で波長415nm~1000nmの光(5バンド)です。

     

    皆様は満月のときはそうでないとき(たとえば半月・三日月など) と比べて明るいように感じませんか。その感覚は気のせいや満月で気が狂ったせいでもなく、根拠があって、更にさきほどの「お盆のような月」とも関係があります。月の表面はさらさらな砂で覆われています。更にはクレーターや高地もあります。その結果、半月のように横から太陽に照らされるとその光は影も同時に作り出すので反射だけのときより余計に暗くなってしまいます。一方満月のときは月の表面の凹凸による影ができないので太陽光の反射がそのまま地球に向かうので、半月の倍以上に明るく見えるのです。

    昔の月はもっと青かっただろうという話もされました。月には大気があまりないので、太陽風や放射線、隕石によって月の表面が変質して鉄分の影響で赤黒くなります。このような宇宙風化によってクレーターからのびる光条(レイ)も月では10億年ほどで消えてしまうそうです。

     

    その後も質問が多く飛び出し盛況の中、幕を閉じました。

    最後になりましたが、ご来場の皆様、佐伯さんと当日いらっしゃったご家族の皆様、商店街の皆様に篤くお礼を申し上げます。(Y.N.)

     

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