Archive for 7月, 2011
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第29回 「大塩平八郎と門人たち」
少しずつ暖かくなってきたと思いきや、朝からの雨で参加者が来るのか不安に思いつつ始まった本日のサイエンスカフェ。テーマは「大塩平八郎と門人たち」。
話題提供者は、関西大学の常松隆嗣さんです。
さっそく始まった常松さんの語り口はなにわのおっちゃんそのもの(先生、すみませんっ)。心配だった参加者も席いっぱいに埋まり、皆さん常松さんの語り口に一気に惹きつけられます。今日のお題は「大塩平八郎と門人たち」。大塩平八郎といえば、まっさきに思い浮かぶ「大塩平八郎の乱」。なんと、その舞台は今まさにこのカフェが行われているこの地なんです。では、今回のカフェの内容について触れていきましょう。
◆乱について
一般的には「大塩平八郎の乱」というと、大坂の町奉行の元与力であり、陽明学者でもあった大塩平八郎が、当時天保の大飢饉に苦しむ民衆を見て救済すべく、奉行所に訴えたり、私財を投げ打って施しをしたりと取り組むも、状況は変わらず、商人による米の買占め(値上がりを期待した)により民衆の生活は苦しくなる一方で、最後は乱を起こすに至った、という理解の方が多いのではないでしょうか。「苦しむ民衆のために立ち上がった正義の味方」といったところですね。では、そもそも大塩はどんな人物だったのでしょうか。
◆大塩平八郎という人物
大塩平八郎は、元役人だった、ということが知られていますが、儒学者としても知られています。自宅で「洗心洞」という私塾を開いていました。非常に「厳しい」人で、よくいえば「清廉潔白」、悪くいえば「融通がきかない、頑固」な性格だったそうです。(なんでも上司は「大塩は使いよう次第」と大塩のことを表現していたとか・・・)
そのため塾でも厳しい指導が行われ、何か間違ったことをすれば、大の大人であろうが、大勢の弟子たちの前で怒鳴られることもあったそうです。そのため、弟子たちの中には大塩のことを恨んでいた人もいて、結局それが乱の決起時に内通離反者を生むことにつながってしまったのかも知れません。
◆大塩平八郎を取り巻く門人たち
ここまで読んでもらえればわかったと思いますが、今回のタイトルになぜ、「門人たち」というのが入っていたかというと、この塾には大塩と志を同じくする門人(弟子)たちがたくさんおり、その一人一人を丁寧に見ていく、という意味だったのです。大塩ばかりがクローズアップされて、その陰に隠れてしまった門人たちですが、個別に見ていくとユニークなエピソードがたくさんあります。たとえば、門人である家族が乱に参加したせいで、一度は断絶するも、そののち再興した家もあれば、大塩の教えを自分の周りの人に伝えるべく、自分で塾を主宰した者もいました。中には、乱に出向く際に適当な口実を作って家を出ていくも、その母親は事情をしっていて、「今日でわが子の運命が決まる」といったことを言ったというエピソードも残っているそうです。
◆別れる大塩平八郎の評価
「大塩平八郎の乱」というと、先に書いたようなイメージがありますが、実際に何をやったかといえば、当時も大都市だった大坂の町の5分の1を焼き払い、多くの人が焼きだされました。手当たり次第に火を放ち、大砲を打ったわけですから、今考えてみると凄まじい状況だったのでしょう。もちろん、多くの民が苦しんでいたのは事実ですが、実際に彼がした行動、それによって1次的、2次的に被害を受けた人間のことも考えると手放しで称賛できるようなことではないのではないか、と常松さんは言います。
◆歴史研究の面白さ
この辺りまできて、そろそろ時間も残り少しになってきましたが、常松さんが最後に次のようなことを話してくれました。
「教科書では少ししか触れられていないようなことでも、よく調べていくと多くのことが見えてくる。特に、今回のように、歴史の表舞台には出てこない乱を支えた門人たちを見ていくことで、その人間模様、事情が分かってくる。歴史研究をやっていて一番面白いのはそのこと」
カフェの時間中、参加者の皆さんの聞き入り方は、真剣そのもの。最後の参加者発言の時間では、自分の住んでいるすぐ近くで乱があったことが驚きだった、という声や、大塩のイメージが変わった、という声などたくさんの方に発言していただきました。
当たり前に知っているようで、実はよく知らない、そんな歴史上の出来事は他にもまだまだあるのかもしれません。 (H)
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