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第45回「まいど1号に続け!学生たちの宇宙への夢」
5月も半ばを過ぎ、しばらくの穏やかな気候の中、開催された第45回北天満サイエンスカフェ。今回のテーマは「まいど1号に続け! 学生たちの宇宙への夢」、話題提供者は大阪府立大学大学院工学研究科 小型宇宙機システム研究センターの大久保博志先生です。
初めに、人工衛星は地球の周りに一体いくつあるのでしょうか。答えは約3000! 下の図のマークが人工衛星やロケットの残骸です(ヨーロッパ宇宙機関提供)。かなり混んでいて、ぶつかりそうですが、これからは宇宙ゴミを出さないように努力して行けば大丈夫だそうです。人工衛星のお仕事はというと、主に観測(ひまわり等)・放送・通信をしています。サイズも大小様々で、何トンもあるものから10cm立方のものまであります。
さて、皆さんはまいど1号のことはご存知でしょうか。知っているよ、という方も、言われて思い出した方も、「何それ?」なんて方もいらっしゃると思いますので、簡単に概要を説明します。「まいど1号」はJAXA(宇宙航空研究開発機構)等の支援を得て、東大阪の中小企業の方々が開発した小型の人工衛星です。大きさは約50cm×50cm×50cm、50kgです。飛ばした高さは地表から660km。
更に、一般的にはあまり報道されませんが、実はこの人工衛星の開発には大阪府立大学や大阪大学等の大学も参加しており、産学官連携による珍しい人工衛星が「まいど1号」です。大阪府立大学は開発当初よりプロジェクトに参加しており、人工衛星の運用の基本的な部分の設計・開発をした他、大阪府立大学の独自のミッションとして太陽センサーの開発・実験を行いました。
前者の基幹部分(バス部分)は主に電力系・姿勢制御系・構造系・熱制御系・通信系等に分かれます。電力系はその名の通り、電池に関連する部分で、太陽電池とバッテリーがあります。熱制御系は、厳しい熱環境の下で、内部の機器が正常に活動できるように内部を適温に保つための部分です。構造系は人工衛星を形作る部分です。人工衛星の外側のパネルはアルミニウム製で、一部はハニカム構造になっています。
姿勢制御系は人工衛星の向きを調整する部分です。人工衛星の向きを調整する主な目的は太陽電池になるべく安定的に太陽光を当てるようにするためです。「まいど1号」ではスピンアップホイール(SPW)や、地磁気と電磁石を使っての姿勢制御を行いました。SPWとは、切り離し前は衛星内部にあるモーターを高速回転させ、切り離し後にそのモーターを止めると、角運動量保存則で衛星全体が毎分3回程度回るようになる、というものです。
次に太陽センサーについて紹介します。
「まいど1号」本来のミッションは小型衛星のバス技術の実験・雷観測用センサーの実験等ですが、それらとは別に府大の独自ミッションとして学生さんが考案した太陽センサーの実験も行いました。太陽センサーのデータは「まいど1号」がちょうど日本上空を通過する時間にあわせて、約25人の学生さんが交替で、府大に開設された運用管制室で受信しました。この際、JAXAと衛星との交信に用いられるSバンド(周波数の範囲の1つです。) ではなく、アマチュアバンド (アマチュア無線で使用される周波数。先述のSバンドより少ない情報しか運ぶことができません。) での交信が行われたため、アマチュア無線家等の市民向けのサービスも行いました。
「まいど1号」は成功を収めました。しかし大阪府立大学の挑戦はここでは終わりません。2005年につくられた小型宇宙機システム研究センターでは、次の宇宙機の計画が進められています。大久保先生はその中で2つの研究・開発を紹介されました。
1つはCEESロケットという種類のロケットの開発です。このロケットは従来型のロケットのように燃料を燃やして飛ぶのではなく、液体窒素にお湯をかけることで一瞬にして窒素を気体にし、その際の体積膨張のエネルギーで飛ぶロケットです。そのため、
C ryogenic 極低温
E conomical 経済的
E cological 環境に優しい
S afety 安全な
ロケットと呼ばれています。ただし、このロケットは推進力が低く、宇宙に行くのは困難です。では何のためのロケットなのでしょうか。このロケットはあくまでも、ロケットを安全に打ち上げてカンサット(模擬衛星)の実験(テスト)をするためのもので、このロケットで宇宙に行く気は大久保先生にもないそうです。
2つ目はOPU-SAT(オプサット)という人工衛星です。こちらは2013年(おそらく2014年前半)に、「まいど1号」同様、H-ⅡAロケットに相乗りして、2014年に宇宙に行くことになっています。大きさは「まいど1号」より更に小さく10cm×10cm×10cm、1kgで、衛星と地表との距離は約400kmです。
こちらのミッションは、未来の電池であるリチウムイオンキャパシター(コンデンサーの一種とお考え下さい。) の耐宇宙性能の実験・高効率電源システム・大電力獲得システムの検証です。
電池とコンデンサーの違いは、化学反応を使うか、あくまで物理的現象に留まるかの差です。
電池は繰り返し使うと劣化すること、低温に弱いことが欠点です。しかしコンデンサーだと化学反応を介さずに電気を溜めたり放電したりできるので、繰り返しによる劣化や低温により使えないというトラブルを避けることが可能です。
OPU-SATのイメージキャラクター「おぷー」最後に、大久保先生は学生が主体的・積極的に宇宙プロジェクトに関わっていくことの重要性を話されました。プロジェクトに参加し、実際に社会で活躍する専門家に触れ合い、各自の専門性を活かして課題を解決していく中で、実社会で重要なことを身に付け、マネージメントを学ぶなど人間として大きく成長をした。これからも衛星設計教育やプロジェクトを通じた学生の教育を持続させていきたいとのことでした。
最後になりましたが、大久保先生とご来場者の皆様にお礼を申し上げます。
(Y.N.)
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