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第11回 「睡眠から考える現代社会とのつきあい方」
第11回北天満サイエンスカフェも、天候に恵まれて路上での開催です!
今回のテーマはこちら。
話題提供をしてくださるのは、大阪大学大学院医学研究科の杉田義郎さんです。
まず、導入として寝不足による日中の体調不良を訴える小中高生が増加している、という話題が。小学生では40%、中学生では60%、高校生では70%もの生徒が寝不足を感じているようです。育ち盛りなので、自分の経験からも寝ても寝ても眠たい、といったような状態なのはすごくわかるのですが、それにしても小学生のうちから寝不足を感じていたことはないような…小学生のうちは9時には床につかされていたものですが、やはり最近の子どもの方が寝不足傾向にあるようです。
小中高生だけにとどまらず、最近では「夜更かし幼児」の増加が社会問題化しているそうです。幼児が夜更かしとは!とビックリしてしまったのですが、これはやはり大人の影響ですね。特に母親が勤めに出ていて、夜遅くまで家事をしなければならないような家庭ではこういう現象が多く見られるようです。
NHKの調べによりますと、実際日本人は50年前と比べて50分ほど平均睡眠時間が減少しているとか。1960年には10時に寝る人が全体の70%だったようで、現代人としてはこれはこれで驚きなのですが、この割合は現在当然低くなっており、全体的に夜型化が進んでいるといえます。
では、何が睡眠時間を短くさせたのでしょうか。
ひとつには、明かりの発達が挙げられます。電灯や蛍光灯が普及する以前、人びとは日の出とともに起床し、日の入りとともに床につく生活をしていました。明かりの発達によって夜も昼と変わらない活動ができる状況になり、夜が夜でなくなったことが睡眠時間を短くさせた要因の一つといえます。他にも、交通手段の発達による運動量の減少などが挙げられます。
ライフスタイルの変化とともに人間の睡眠時間は減少していった、ということですね。そう考えると、最近の小中高生の寝不足の増加もインターネットや携帯電話の普及と関連があるかもしれません。
睡眠を司るのは脳ですが、人間の脳には「眠る脳」と「眠らせる脳」とがあるそうです。
眠っているときに全ての脳が眠りについているわけではなく、生体維持に関わる間脳や延髄など大脳以外の部分は起きていて活動し続けています。これらが「眠らせる脳」で、唯一休息する大脳が「眠る脳」というわけです。
それから、脳には睡眠物質というものがありまして、それはホルモンだったり代謝に関わる物質だったり様々なのですが、睡眠不足に陥ると睡眠物質がうまく出ずに体調不良の原因になるようです。
それから、人間の体の持つリズム。体温や光を浴びるタイミングによって人間の体のリズムは調整されています。体調が悪いときは単に睡眠不足というだけでなく、この全体のリズムの不調和が原因であることも多いようです。
それから、睡眠の話題で忘れてはいけない不眠の話。その多くはストレスなどによる一過性のものらしく、あまり気にしないでいればまた自然と眠れるようになるのですが、慢性化してくると眠れないことが心配だったり、夜が来るのが恐かったりと、眠れないこと自体が不眠の原因になってしまうんだそうです。眠らないといけないという緊張が不眠に拍車をかけているということですね。先生は、個人個人で必要な睡眠時間は違い、何時間寝ないといけない、という強迫観念を取り除くことが不眠解消への第一歩だと話されていました。
具体的な不眠解消の手段としては、入浴や運動の入眠促進効果を利用しましょう。人間は体温が下がるときに眠くなるので、入浴や運動で体温が上がり、その後下がる時に横になると眠りやすいんだそうです。ちなみに、人間の持つ体温リズム的には午前3時~5時が一番低体温で、その時間の眠りは質のいい眠りで疲れがよく取れるとのこと。どれだけ忙しくても、この時間帯だけは横になって体を休めるという人もいるほどなんです。
先ほどの人間の持つ生体リズムの話から言っても、睡眠不足を解消するためには単に睡眠時間を増やすよりも毎日の起きる時間と寝る時間を固定するほうがいいとのことでした。そうすることによって全体的な体のリズムが調整されやすいのです。時間を固定しておけば、次にどんな行動を取るか体自身が予測してそれに備えることができるからです。
今回のサイエンスカフェでは参加された皆さんから非常に多くの質問が出て、さながら出張診療所といった感じでした!このことからも、睡眠という話題に対する皆さんの関心の高さがうかがえ、非常に興味深い時間となったと思います。
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