Archive for 3月 24th, 2010

  • 第10回 「人間はなぜ助け合うのか? ヒトという動物の面白さ」

    Date: 2010.03.24 | Category: 未分類 | Response: 0

    第10回の北天満サイエンスカフェ、ずいぶん暖かくなってきたので久しぶりに路上での開催です。

    本日のテーマは「人間はなぜ助け合うのか? ヒトという動物の面白さ」。

    話題提供をしてくださるのは大阪大学大学院理学研究科の長野八久さんです。

    今回のテーマ、人間はなぜ助け合うのか?その疑問への答えを探るためには、ヒト―私たち人間を含む、サルの仲間の動物を観察することが重要だとされています。

    サルの行動は人間を引き写したようなもので、サルの行動を研究することで見えてくる人間の行動の理由もあるということですね。

    とはいえ、それはただ単にサルが人間に「遺伝子的に近い」から、という理由だけではありません。サルが人間に近いというのは、遺伝子的な要因以上に、その社会構造が関係しているのです。つまり、サルが人間に非常に近い社会を持っているということが明らかになってきたのです。

    その例として、ニホンザルのグルーミング(毛づくろい)が挙げられます。観察していると、サルは暇さえあればいつもグルーミングをしているそうです。なぜグルーミングをするのか?昔はグルーミングはノミ取りなどと呼ばれ、単に衛生的機能のみを持つ行為だと思われていましたが、この行為には重要なコミュニケーション機能があるのです。

    ニホンザルは群れで生活します。その群れの中で、お互いがどんな地位を占めているのか、その確認行動としてグルーミングが行われているのです。それと同じ行動が、人間の「おしゃれ」です。服を着ている動物は世界中見渡しても人間だけですが、なぜ人間が流行を追いかけおしゃれをするのかというと、グルーミングと同じように集団の中における自分の地位の確認行動なのです。皆と同じ洋服を身に付けることで自分もこの集団・社会の一員なのだと確認しているのですね。

    また、チンパンジーの子どもを集団で遊ばせると、むかで行列をして遊んでいるときに、いつも前にいる子、後ろにいる子というのが分かれてくるそうです。(ハナちゃんはいつも一番前、といった具合に)これも、集団の中における自分の位置を確認する行為といえます。少し難しい言葉で言えば、個別認識による秩序ができている、ということです。これは人間の社会における秩序と非常によく似ています。このような秩序は、アリやハチなどの社会的動物の秩序とは性質を異にするものです。アリやハチなどは個別に認識しあっているわけではなく、それぞれが巣(社会)においてそれぞれの役割を果たしながら秩序を保っているのにすぎず、人間やサルの社会とは異なるのです。

    また、自分でない相手を自分と違う個体として認識できるということは、逆に自分の存在を自己として認識できるということでもあります。イソップ童話における犬の話のように、多くの動物は鏡に映った自分を自己だと認識することはできません。

    しかし、チンパンジーに鏡を渡すと、鏡に向かって舌を出したり自分のまぶたを裏返したりする行動に出るそうです。このような行動は鏡に映った自分を自己だと認識し、じゃあ自分の舌やまぶたの裏はどうなっているんだろう?という考えによる行動だと考えられます。

    このように、自分を相手と違う自分、相手を自分と違う相手、という風に認識できる動物は、きわめて人間と近い社会を形成します。そのような社会で生きる動物には、相手が何を考えているのか想像する能力が非常に重要になってきます。

    例えば人間には相手の表情を読み取る能力があります。生身の人間だけでなく、ピカソの泣く女や、顔文字のような記号でも、それらを人間の顔として認識し、その表情や心の状態を理解できる能力を持っています。当然のように私たちはこの能力を発揮しているのですが、それは実はものすごい能力なんですね。

    で、この能力が今回のテーマ「人間はなぜ助け合うのか?」この疑問につながってきます。困っている相手を助けることは、利他的行動と言い換えることができます。他人のための行動、ということですね。この行動を起こすためには、「相手が困っている、悲しんでいる、辛がっている」ということを認識する必要があります。この認識にいたるために、先ほど述べた相手の表情を読み取り、何を考えているのか想像する能力が必要となります。そのようにして相手が困っていることを理解したとき、私たちの心にはごく自然に「助けたい」「何かしてあげたい」という気持ちがおこってくるものです。この気持ちはどこから来るのか。それは実はヒトの母と子の関係がヒントになっていました。

    ヒト科の動物、つまり人間やサルは他の動物に比べて親離れに時間がかかります。だいたい5年くらいかかります。その5年の間に子どもは自分の属する社会と自分との関係を、自分や相手を認識することによって築いていきます。そして、その5年間母親は自分をある種犠牲にして、子どもを育てます。母親に利他的に育てられた経験が、他人のための行動をごく自然に行う基礎になっている、と先生は主張されます。

    驚くべきことに、人間だけでなくチンパンジーが利他的行動を取るという事実が、この主張の根拠になっています。開発によりジャングルを突っ切った道路は交通量が多く、子ザルを2匹連れた母ザルはなかなか渡ることができないでいました。そこへ通りかかった若いオスザルが、サルの親子が道路を渡るのを手助けしたのです。

    昨今、世間には心が痛むようなニュースに溢れ、所詮ヒ人と人との助け合いなんて幻想にすぎないと思うこともあるかもしれません。

    しかし、科学的に見て人間は誰でも「助け合う能力」を持っている、ということは大きな希望、可能性なのではないかと思えた今回のカフェでした。

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