Archive for 7月 16th, 2010
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第15回「ラマルク『動物哲学』から200年、進化論の今」
「梅雨」と言う響きは好きですが、毎年蒸し暑さに困り果ててしまいますよね。
そんな梅雨のさなか、今回もいつも通り商店街のアーケード下でのサイエンスカフェ。
みなさんうちわでパタパタ扇ぎながらも熱心に話を聴いてくださいました。
今回の話題提供者はみずしま財団の白井浩子さん。
テーマは「ラマルク『動物哲学』から200年、進化論の今」でした。白井さんのラマルクに対する愛がこれでもか!!と伝わるくらい熱心に話してくださいました。
話を聞くうちにラマルクのファンになってしまった人も多いのではないでしょうか?進化論といえば、みなさんまず思い浮かべるのはダーウィンでしょう。
「どんな生物も、偶然起こった遺伝子の変化(変異)を持っている。その中で周りの環境に有利な変化をもったものが生き残ってきた。」
という自然選択説を発表しました。偶然の変化を主張したダーウィンに対してラマルクは、
生物は周りの環境に適応するように暮らしていくうちに、体の形を変化させていった、
と説きました。
例えばキリン。背の高い木が生えている環境があったから、それを食べるために首を伸ばしているうちにだんだん長くなっていった、という具合。生物はなぜ多様か?
それは「環境に合わせて暮らす」という生物の能動性が作ったから。
偶然形が出来たわけではないのです。ちなみに、このように変化した形が受け継がれるのを獲得形質の遺伝というのですが、今では批判的な意見もあるようです。
理由は、子どもが親(父・母)ではなくそのまた親(祖父・祖母)の遺伝子を受け継ぐから。
親がいくら環境に適応しても、その子どもにはその変化は受け継がれないことになるのです。
ただし、ラマルク自身は獲得形質が「すぐ」遺伝するとは言っておらず、長い時間をかけて遺伝していくと言っているそうです。カフェ参加者の方から、
「いずれにせよ、遺伝子に新たな形の情報が反映されないと、継承されないのでは?」と質問がありました。
するどい指摘です。
変化がどうやって遺伝子に伝わるか、ついてはまだ研究中…ということでした。ところで、ラマルクってどんな人だったのでしょうか?
実は、ラマルクは現在の「生物学」という言葉をつくった人なのです!
それまでの博物学では物を三つに分けて考えていました。
その三つとは、「非生物」「植物」「動物」です。
ラマルクはこの分類に疑問を抱いていました。博物館でずっと観察を続けていて、どうもこの分類では物事をうまく説明できないと感じていました。
そこで、「植物」と「動物」をあわせて「生物」とし、「非生物」との二つに分類したのです。
このことには大きな意味がありました。
「生物」に共通する新たな疑問が生まれてきたからです。
『分類を誤ると次の質問がうまれてこない』というのがなるほど、心に残りました。彼の生きた時代は フランス革命の時代でした。
そのため彼の先進的な考えは、キリスト教の創造説と対立することになりました。
ラマルクは「神が全てを創造した」ということに納得できませんでした。
生物があまりにも多様だからです。しかも、それぞれが環境に適応している。
「あらゆる環境を予測して神は全てを創造したのか?」
博物館で観察を続ける中でラマルクは、単純から複雑へ生物が変化していったと考えるのが妥当だと考えていたそうです。
固定概念に惑わされず、事実を真摯に受け止めて考える姿勢、カッコイイですね。私たちの体には退化した器官があります。
盲腸や親知らず、尻尾などがそれです。
また、卵子からヒトの形に発生していく間にも、魚と同じエラのようなものがある時期があります。
もし神が作ったとしたら、このような無駄な器官や過程をわざわざ作るでしょうか?
進化だけでなく退化に関しても化石研究によって徐々に変化が起こることが分かっているそうです。
ちなみに、一つの退化にかかる時間は、五千万年!
しかも、前半の時期なら退化が元に戻る例もあるそうです。この話の時に白井さんが、
「退化といっても、遺伝子にはプログラムが残っているため、その遺伝子が働けばしっぽができたりする。それは科学的には当たり前なのに、ただ他の人と違うというだけですぐ見せ物にしてしまうのはどうなのか。」
とおっしゃっていたのが印象的でした。他にも、「今は医療をいじりすぎに思う。予防医学をもっと発展させるべき。もし、最新医療を導入するなら無料にするべき。」など、白井さんの現在の生命科学・医療に対する思いも伺うことが出来ました。
最後に、いま白井さんがやっている研究について伺いました。
白井さんは「イトマキヒトデ」や「ヨツアナカシパン」といった変わった名前(おいしそう^^;;)のヒトデを使って研究をしているそうです。それぞれ発生の過程(卵から幼生を経て成体になるまで)を観察しているそうです。
イトマキヒトデは、同じような発生の過程を辿るにも関わらず、最終的に大きさに大きなばらつきが生まれるそうです。なんと、体積の比で500倍も違うものがいるとか!
ヨツアナカシパンは幼生のときにいくつかトゲトゲ(突起)があるのですが、その数は固体によってバラバラだそうです。このように生物にはバラつきがあったり、非必須をもつ「ゆとり」がある。
白井さんはそこから『余剰進化論』という新しい進化論を考えているそうです。
余剰があるからこそ多様で良い。
なんだか私たちの社会にも当てはまりそうです。白井さん自身の魅力や話の面白さで2時間あっという間でした。
(なんと!その間、白井さんは立ちっぱなしでした!!)
終わってからも質問は続々。
「毎日忙しくて研究も出来ないのよ~」と言いながら楽しそうに話す白井さんのパワフルさに脱帽でした。
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