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第14回「家族と住まい 生活に合った住まいに住んでいますか?」
サイエンスカフェ会場となっている天五中崎通商店街の一角に、こんな建物が…
この「Art&Science Cafe」は現在行われているサイエンスカフェの拠点として使用される他、今後アートとサイエンスに関わるさまざまな取り組みを行っていく予定です!室内はこのような感じで、壁は黒板になっています。少人数のセミナーなどを行うときに便利ですね。プロジェクターもあるので、簡単な研究発表だとか上映会も可能かもしれません。地域のみなさんや、学生さんのアイディア次第でいろいろな使い方ができそうです。
今回のサイエンスカフェは、この「Art&Science Cafe」の開設式の後に行われました。オープニングセレモニーとして、アカペラグループ「Sheepon」さんのライブです。今回も子どもからお年寄りまで楽しめる曲目を素晴らしい歌声で歌い上げて下さいました!
開設式には多数の方にご出席頂き、和やかな雰囲気で会が進められました。(詳しくは天五中崎通商店街のHPへ→http://kitatenma.com/)
さて、開設式が閉会した後、第14回サイエンスカフェの始まりです。今回のテーマは「家族と住まい 生活に合った住まいに住んでいますか?」、話題提供をしてくださるのは小伊藤亜希子さんです。
日本の住まいは戦後、いわゆるnLDK空間モデルという様式が急速に広まっていきました。例えば、3LDKというのは個室が3つにリビング(L)、ダイニング(D)、キッチン(K)がついている間取りですね。しかし、これはあくまで欧米風の様式であり、もともと広い空間をふすまや障子などで仕切って暮らしてきた日本人の住み方とは多少のズレが生じています。
例えば、欧米の家庭では子どもには小さい頃から子ども部屋が割り当てられ、かなり幼い頃から自分の部屋で両親と離れて就寝する文化があります。しかし日本人の子どもは平均して10歳頃まで親といっしょの部屋で寝ています。そのため、子ども部屋を作ってはいるけれども子どもが小さいうちは物置になっている…というような現象がよく見受けられます。
私たちは、生活に合わせた間取りではなくて、間取りに合わせた生活をしてしまっている場合があるのかもしれません。小伊藤さんのお話に出てきた例で印象的だったのが、2DKのおうちに住んでいる姉一人弟一人の4人家族のお話だったのですが、個室は子どもたちに子ども部屋として割り当てられており、姉と弟は別々の部屋で寝ています。では両親はどこで寝ているのかというと、お母さんはダイニングキッチンで、お父さんはなんと廊下で寝ておられるとのこと。子どもたちには一人ひとり子ども部屋がなくてはならない、という考え方は80年代頃から当たり前のようになっている考え方なんだそうですが、果たしてそれが「ウチ」に合っているのかな?ということも、考えてみる必要がありそうですね。
欧米の生活様式は、家族のメンバー一人ひとりに個室(寝室)があり、そのスペースは完全に私的空間として使われます。その代わり、リビングは公的空間として使われており、公私の区別が住宅の中でもはっきりとしている印象を受けます。
それに比べると、日本の生活様式ではリビングは「雑居部屋」として扱われていることが多いようです。リビングにお客さんを通して公的空間として使うときもあれば、お母さんがテレビを見ながら洗濯物をたたむこともあるでしょうし、お父さんが昼寝をしたり、子どもが着替えたりしているのもよく見られる光景です。
その場合、本来間取りが想定していた私的生活活動のうちのいくらかの部分が公的スペースであるリビングにおいてなされているわけですから、個室の使い方もそれに合わせて変えていくことが、よりよい住まいにおいて大切なのではないでしょうか。
それから、「住まいのなかの妻の専用スペース」の話題も提供されました。女性が社会進出していく一方で、依然として女性には家庭責任が期待されています。そのため、一定時間は在宅し、家で仕事をせざるを得ない状況があるのですが、そうしたスペースはnLDKモデルのどこに発生しているのでしょうか。
建築・住居系、教員、市民活動従事者を対象とした調査結果は、専用スペースの所有率は64.6%でした。(単身者含む)用途は、仕事や勉強のためというのが一番多く、家事をするスペースとして使っている方は23.9%にとどまりました。従来の「男性が外に出て仕事をし、女性が家のことをする」という日本社会の価値観においては、住宅にも男性のみ書斎であるとか、ワークスペースが必要とされてきましたが、共働きの家庭が増えてきている昨今の現状を鑑みると、女性にもそのようなスペースが必要とされているのは至極当然なことなのかもしれません。
とはいえ、専業主婦であっても一人になれる場所として自分のスペースがほしいと思うものです。しかし、働いているのならまだワークスペースとして自分の部屋の必要性を主張できるものの、専業主婦の方が自分の部屋が欲しいというのはまだまだ言い出しにくい風潮があるのも事実なようです。
このようなお話を踏まえて、最後に提示されたある間取りは考えさせられるものでした。「自立家族の家」と名づけられたその間取りには、広いリビングのようなスペースの他に、家族一人ひとりに割り当てられた個室が4つ付いています。共通の玄関はなく、各部屋にそれぞれ玄関がついています。(お客さんを呼ぶときには必ず誰か一人の部屋を通らなければならない)確かに、個々人の私的なスペースは確保されています。妻の居場所もありますし、父親が廊下で寝る必要もありません。だけれども、筆者はこの間取りにとても疑問を感じてしまうのです。リビングスペースはあるので家族団らんができないというわけではないし、個室がそれぞれにあるのも便利だと思います。ただ、それは「自立」の形なのか?という疑問を抱かざるを得ません。実際、この家に実験的に住まれたご家族には不評だったようで、個室がそれぞれにあることと自立とは違うと思う、とおっしゃっていたそうです。
今回のサイエンスカフェで強く感じたのは、住まいや間取りというのは思っているよりずっと家族の暮らし方に影響を与えるということ、そしてその暮らし方に家族の価値観がとても反映されるということです。nLDK型の間取りが一般的な日本人の住み方とズレているとはいえ、住んでいる家族がとても満足して使っているのであれば、それはひとつの理想的な住まいの形なのでしょう。何を犠牲にしても子ども部屋を確保してやりたいと強く願うご家庭があっても、それはそれで一つの考え方なのだと思います。
住まいというものが家族の生活に深く関わるものだからこそ、それについて見直すことが家族の価値観、ひいてはその家族の幸せとは何か?ということを考える機会になるのではないかということを考えさせられた今回のカフェでした。
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