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第8回「大坂歴史ツアー – 緒方洪庵と適塾」
今回の北天満サイエンスカフェは、第8回にして「大坂歴史ツアー 緒方洪庵と適塾」と題しまして、いつもお借りしているHeArt美容室を飛び出して適塾の見学に行ってきました!
適塾は、幕末の蘭学者・医学者の緒方洪庵が現在の大阪市中央区に開いた学塾であります。いつもの商店街からツアーに参加された皆さんと一緒にてくてく歩き、地下鉄に乗って北浜駅へ。そこからさらに5分ほど歩けば到着です。近い!
この方が今回の話題提供者、大阪大学大学院文学研究科の村田路人先生です。
そしてこちらが適塾の外観。ビル群の中に建つ伝統的な町屋の佇まいにすでに歴史の香りを感じます。適塾は江戸時代の蘭学塾であり、優れた塾生を多く輩出したことでも有名ですが、江戸時代の町屋の姿を現代に留めているという意味でも歴史的な価値のある文化遺産なのです。
わくわくしながら、いざ中へ。
入ってすぐの部屋は教室です。ここで多くの塾生が学んだのですね。想像していたよりも、少し狭いように思いました。板の間には緒方洪庵の小さな像が。洪庵先生、お邪魔いたします。
渡り廊下を通った先の客座敷で緒方洪庵と適塾についてのビデオを見ました。
緒方洪庵が現在の場所に適塾を移したのが1845年、弘化2年のことです。それまでは自宅で塾を開き教えていたのですが、全国から集まった塾生が多くなったため、広い町屋を買い取って2階は全て門下生の下宿部屋としたようです。藩主の命によって適塾に入門者を送ってくるところもあったというのですから、適塾の評判の高さがわかります。
また、緒方洪庵は日本医学の近代化にもっとも貢献した医学者の一人であるともいえます。医学書を著すだけにとどまらず、一人の医者として、実に高い行動力を持っていたことがその功績からわかります。たとえば、長崎から入ってきたコレラはまたたく間に大阪まで広がり、「三日ころり」という名前で恐れられました。洪庵はこの未知の病気に対して「虎狼痢(ころり)治準」というコレラの予防書を刊行しました。多くの医者がこの本を頼りにコレラの治療にあたったそうです。また、洪庵は天然痘の予防のため、種痘事業にも尽力しました。人痘種痘法よりも安全で確実な牛痘種痘法を普及させるために大変な努力をされたということです。現在適塾の南にも除痘館(種痘所)が残っています。
村田先生に普段はめったに見られないいろいろな資料も見せていただきました。写真をここに載せることはできないのですが、たとえばある時期の塾生名簿のようなものが残っていました。塾生は学力に応じて等級に分けられ、成績のいい者から下宿している部屋での位置も決められたそうです。日あたりの良い場所や部屋の奥は優秀な者からその場所を陣取り、逆に成績が悪いものは出入りの激しい階段の近くに寝起きしなければならなくなります。それでも、塾生が持てる自分のスペースは一畳で、そこで寝たり机を出して勉強していたりしていたとか。現代の学生のなんと恵まれていることか!
同じ感想を、ヅーフ部屋と呼ばれる部屋を見学した時にも感じました。ヅーフというのは蘭和辞書のことで、この部屋に一冊しかなく、部屋から持ち出すことも禁止ということで、塾生たちは競い合うようにしてヅーフ部屋に押しかけ、夜中でもこの部屋の灯りが消えることはなかったといいます。
展示されているものはそのヅーフをまるまる一冊写したもの。参加されたみなさんからも、辞書を一冊書き写す学習意欲の高さに感嘆のため息が漏れていました。書き写すという行為は暗記には最適だそうで、私も辞書まではいかなくとも、見習いたいと思いました。
こちらは塾生が下宿していた大部屋の真ん中にある柱。この柱には塾生がつけたと見られるたくさんの刀傷がついていました。試験が終わった憂さ晴らしのような感じで切りつけたりしていたのではないかとのこと。この時代の人たちのエネルギーがその傷にも残っているような、そんな気がしました。
現代も幕末と同じように激動の時代といわれていますが、今回適塾を見学して思ったのは、現代の学生にこの時代の塾生のようなエネルギーがあるだろうか…ということでした。自分のことを考えてみても、恵まれている現状に妥協してどこか手を抜いているところがあるような気がします。
新しい知識を貪欲に吸収しようとしていた当時の塾生のように、自分ももっとできることはあるはず、と前向きに考えさせられた見学でした!
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